「データサイエンティストはいらない」は本当か?不要論の背景と企業がデータ活用で成果を出すための条件
2026.01.26
「データサイエンティストはいらない」「AIで代替される」という声が聞かれるようになりました。自動化ツールの進化やノーコード分析ツールの普及により、専門家がいなくてもデータ分析ができる環境が整いつつあることが背景にあります。 一方で、データサイエンティスト協会の調査によれば、目標通りに人材を確保できなかった企業が約6割に上り、在籍企業の77%が今後3年間で増員を予定しているなど、需要は依然として高い状況です。本記事では、データサイエンティスト不要論が生まれる背景を整理し、企業がデータ活用で成果を出すために本当に必要なことを解説します。
- 「データサイエンティストはいらない」と言われるのはなぜ?
- データサイエンティスト不要論が生まれる3つの理由
- AIや自動化ツールの進化による業務代替
- ノーコード・可視化ツールの普及で非専門家でも分析可能に
- 現場を知らない分析では成果が出ないという認識
- それでもデータサイエンティストが必要とされる理由
- AIにはできない「課題設定」と「洞察」の領域
- ビッグデータ活用企業の増加と深刻な人材不足
- 国を挙げたデータサイエンティスト育成の推進
- データサイエンティストは「いらない」のではなく「活かせていない」可能性も
- データ活用の基盤が整っていない
- ビジネス部門とデータ部門の連携不足
- 学習データの品質に問題がある
- データ活用で成果を出すために企業が取り組むべきこと
- データ活用の目的と課題を明確にする
- 組織全体のデータリテラシーを高める
- 高品質な教師データを整備する
- 高品質なAI開発を支えるブライセンのアノテーションサービス
- まとめ
「データサイエンティストはいらない」と言われるのはなぜ?
「データサイエンティストはいらない」という声が広がっている背景には、複数の要因があります。データサイエンティスト協会の調査では、データサイエンティストが1人以上在籍している企業は全体の約3割にとどまり、約8割の企業にはデータサイエンティストが在籍していません。
出典:データサイエンティストが在籍している企業は約3割–データサイエンティスト協会が調査
この数字だけを見ると「多くの企業にとって不要な存在」と思われがちですが、実態はより複雑です。データ活用の必要性を認識していない企業、費用対効果が見込めないと判断している企業、そもそも採用したくても人材が見つからない企業など、「いらない」と言われる理由はさまざまです。
本章では、データサイエンティスト不要論が生まれる代表的な3つの背景を整理します。
データサイエンティスト不要論が生まれる3つの理由
データサイエンティストが「いらない」と言われる背景には、技術の進化やツールの普及、そして現場との乖離といった複数の要因が絡み合っています。これらの要因を正しく理解することで、データサイエンティストの本来の価値が見えてくるものです。
ここでは、不要論が生まれる3つの主な理由を解説します。
- AIや自動化ツールの進化による業務代替
- ノーコード・可視化ツールの普及で非専門家でも分析可能に
- 現場を知らない分析では成果が出ないという認識
AIや自動化ツールの進化による業務代替
近年、機械学習モデルの構築を自動化するツールが登場し、従来は専門家が手作業でおこなっていた工程の多くが自動化されるようになりました。データの前処理、特徴量の抽出、最適なパラメータの調整といった作業を自動でおこなえるツールが普及しています。
こうした技術の進化により、定型的な分析業務はAIが担えるようになりつつあります。「専門家に高い報酬を払わなくても、ツールで代替できるのでは」という声が生まれるのも自然な流れといえるかもしれません。
ただし、自動化されるのは「手を動かす作業」であり、「何を分析すべきか」「分析結果をどうビジネスに活かすか」といった課題設定や仮説立案は依然として人間が担う領域です。
ノーコード・可視化ツールの普及で非専門家でも分析可能に
データの可視化や基本的な分析をおこなえるツールが進化し、プログラミングの知識がなくてもデータ分析ができる環境が整ってきました。直感的な操作でグラフやダッシュボードを作成でき、マーケティング担当者や営業担当者が自らデータを分析するケースが増えています。
こうしたツールの普及により、「専門のデータサイエンティストは不要では」という声につながっています。実際、日常的なレポート作成や売上データの可視化程度であれば、現場の担当者でも十分に対応可能です。
しかし、複雑な統計分析や予測モデルの構築、大規模データの処理となると、専門的な知識とスキルが必要になります。ツールで対応できる範囲には限界があることも理解しておく必要があるのです。
現場を知らない分析では成果が出ないという認識
「製造現場のデータは、見る目のある人が見れば分析なんかしなくても意味は分かる」という声があるように、現場を知らないデータサイエンティストへの懐疑的な見方も存在します。時間をかけて分析した結果が、現場の経験則と大差ないのであれば、その価値に疑問を感じるのも無理はありません。
この背景には、データサイエンティストと現場の連携不足という問題があります。ビジネスの文脈を理解しないまま分析をおこなっても、実務に活かせる洞察は得られにくいのが現実です。
ただし、これは「データサイエンティストが不要」なのではなく、「活かし方を間違えている」という問題といえます。現場とデータ分析の橋渡しができる体制を構築することで、この課題は解決可能です。
それでもデータサイエンティストが必要とされる理由
不要論が存在する一方で、データサイエンティストの需要は依然として高い状況が続いています。AIの進化やツールの普及があっても、人間にしかできない領域は確実に存在するためです。
ここでは、データサイエンティストが必要とされる3つの理由を解説します。
- AIにはできない「課題設定」と「洞察」の領域
- ビッグデータ活用企業の増加と深刻な人材不足
- 国を挙げたデータサイエンティスト育成の推進
AIにはできない「課題設定」と「洞察」の領域
AIが得意とするのは、大量データの処理やパターン認識といった作業です。しかし、「なぜその分析が必要か」「結果が意味することは何か」といった判断は、AIには困難な領域となっています。
ビジネス課題の抽出、仮説の立案、分析結果からの洞察、経営層への提案といった工程には、人間ならではの思考力と判断力が求められます。これらはデータサイエンティストの本来の価値であり、AIやツールで代替できるものではありません。
むしろ、定型業務がAIに任せられるようになったことで、データサイエンティストはより高度な課題解決に集中できるようになったとも考えられます。
ビッグデータ活用企業の増加と深刻な人材不足
IoTやデジタル化の進展により、企業が扱うデータ量は爆発的に増加しています。経営判断やマーケティングにビッグデータを活用する企業が増える中、データサイエンティストの需要も高まり続けているのが現状です。
データサイエンティスト協会の調査によれば、目標通りに人材を確保できなかった企業が約6割に上っています。また、データサイエンティストが在籍する企業の77%が今後3年間で増員を予定しており、需要の高さがうかがえる結果となりました。
経済産業省の試算では、2030年時点でAI・データ人材を含む高度IT人材が最大約14万人不足するとされています。「いらない」どころか、人材不足が深刻な課題となっているのが実態です。
国を挙げたデータサイエンティスト育成の推進
データサイエンティストの重要性は国策レベルで認識されており、人材育成が積極的に推進されています。経済産業省はDX推進スキル標準の中でデータサイエンティストの重要性を明示し、企業のDX推進に不可欠な人材として位置付けました。
文部科学省は、大学におけるデータサイエンス系学部の設立を促進しています。2025年までに全ての大学生・高専生がデータサイエンスの基礎を習得する目標が掲げられており、数理・データサイエンス・AI教育プログラムの認定を受けた大学も増加中です。
また、厚生労働省による学習者への補助金・助成金制度も整備されており、スキル習得を支援する体制が構築されています。国を挙げて人材育成を進めている現状を見れば、データサイエンティストが「いらない」とは言い難い状況といえるのではないでしょうか。
データサイエンティストは「いらない」のではなく「活かせていない」可能性も
データサイエンティストを採用しても成果が出ないケースがあることは事実です。しかし、それは「データサイエンティストが不要」なのではなく、「活かせる環境が整っていない」可能性を考える必要があります。
ここでは、データサイエンティストを活かせない3つの原因を解説します。
- データ活用の基盤が整っていない
- ビジネス部門とデータ部門の連携不足
- 学習データの品質に問題がある
データ活用の基盤が整っていない
そもそも分析に必要なデータが収集・蓄積されていない企業は少なくありません。データが部門ごとに分散して管理されており、統合的な分析ができない状態も多く見られます。
こうした環境でデータサイエンティストを採用しても、分析の前段階で行き詰まってしまいます。「データサイエンティストがいれば何とかなる」という誤解が、期待外れの結果を招いているケースもあるのです。
データ基盤への投資なしに人材だけを採用しても、成果を出すことは困難です。データサイエンティストが力を発揮できる環境を整えることが先決といえます。
ビジネス部門とデータ部門の連携不足
せっかく分析をおこなっても、その結果がビジネスの意思決定に活用されないケースがあります。事業責任者がデータ分析の価値を理解していなかったり、データサイエンティストがビジネス課題を正しく把握できていなかったりすることが原因です。
データサイエンティストが専門用語で説明しても、ビジネス側に伝わらなければ意味がありません。逆に、ビジネス側が曖昧な依頼をしても、的確な分析結果は得られないのです。
両者の橋渡しができる人材や体制の構築が必要です。データサイエンティストにビジネス理解を求めるか、ビジネス側にデータリテラシーを求めるか、あるいはその両方が求められます。
学習データの品質に問題がある
AIや機械学習モデルの精度は、学習に使用するデータの品質に大きく依存します。ノイズの多いデータや、ラベル付けが不正確なデータでは、高精度なモデルを構築することはできません。
実際、多くの企業でデータの前処理やクレンジングに膨大な時間がかかっています。データサイエンティストが本来の分析業務に集中できず、データの整備作業に追われているケースも珍しくありません。
高品質なアノテーション(ラベル付け)データの整備が、AI活用の成否を分ける重要な要素となっています。この部分への投資なしに、データサイエンティストの成果を期待するのは難しいといえます。
データ活用で成果を出すために企業が取り組むべきこと
データサイエンティストを採用するだけでは、データ活用の成果は生まれません。組織として取り組むべき課題を明確にし、データサイエンティストが力を発揮できる環境を整えることが重要です。
ここでは、企業が取り組むべき3つのポイントを解説します。
- データ活用の目的と課題を明確にする
- 組織全体のデータリテラシーを高める
- 高品質な教師データを整備する
データ活用の目的と課題を明確にする
「データを活用したい」という漠然とした目標では、成果を出すことは困難です。解決したいビジネス課題を具体的に定義し、そのために必要なデータは何か、どのように収集するかを設計しなければなりません。
たとえば「売上を向上させたい」ではなく、「どの顧客層に、どの商品を、どのタイミングで提案すべきかを予測したい」というレベルまで課題を具体化することが求められます。
目的が明確であれば、データサイエンティストも何を分析すべきかが明確になり、パフォーマンスが向上します。課題設定の段階から、ビジネス側とデータサイエンティストが協働することが理想的です。
組織全体のデータリテラシーを高める
データサイエンティスト任せにするのではなく、現場の担当者がデータを理解し、活用できる状態を目指すべきです。事業責任者がデータ分析の仮説設定や検証に関与することで、より実務に即した分析が可能になります。
データ活用の意義を経営層から現場まで浸透させることも重要です。「なぜデータを活用するのか」「どのような成果を期待するのか」を組織全体で共有することで、データサイエンティストと現場が協働できる文化が醸成されます。
データサイエンティストを孤立させず、組織全体でデータ活用に取り組む体制を構築することが、成果を出すための鍵となります。
高品質な教師データを整備する
機械学習モデルの精度は、アノテーション(ラベル付け)の質によって決まります。正確で一貫性のあるアノテーションデータがあってこそ、AIは高い性能を発揮できるのです。
しかし、自社でアノテーション作業をおこなう場合、品質管理や工数の面で多くの課題に直面します。専門知識を持たない担当者がラベル付けをおこなうと、精度のばらつきが生じやすくなります。
専門のアノテーションサービスを活用することで、高品質なデータを効率的に整備することが可能です。データサイエンティストが本来の分析業務に集中できる環境を整えることが、成果を最大化するポイントとなります。
高品質なAI開発を支えるブライセンのアノテーションサービス
ブライセンは、10年以上の実績を持つアノテーション専門企業です。画像・動画・音声・テキスト・3D点群データなど、多様なデータタイプに対応したアノテーションサービスを提供しています。
厳格な品質管理体制と明確なガイドライン整備により、一貫性のある高品質なデータを提供することが可能です。データサイエンティストが本来の分析業務に集中できる環境づくりを支援します。
データ収集からアノテーション、AI開発までワンストップで対応できる点も強みです。自社でのアノテーション作業に課題を感じている企業は、ぜひブライセンのサービスをご検討ください。
まとめ
「データサイエンティストはいらない」という声がある一方で、人材不足は深刻化しており、需要は依然として高い状況です。AIや自動化ツールが進化しても、課題設定や洞察といった人間にしかできない領域は確実に存在します。
成果が出ないケースの多くは、データサイエンティストが不要なのではなく、活かせる環境が整っていないことが原因です。データ基盤の整備、ビジネス部門との連携強化、高品質な教師データの準備といった取り組みが求められます。
データ活用で成果を出すためには、データサイエンティストを採用するだけでなく、組織全体でデータ活用に取り組む体制を構築することが重要です。目的を明確にし、必要な投資をおこなうことで、データサイエンティストは大きな価値を発揮できるはずです。

