データサイエンティストとデータアナリストの違いとは?仕事内容・スキル・キャリアパスを徹底比較
2025.12.22
データを活用した経営判断が企業の成長を左右する時代となり、「データアナリスト」と「データサイエンティスト」という職種への注目が高まっています。 しかし、両者は名称が似ているため、「何が違うのか」「自分はどちらを目指すべきか」と迷う方も多いのではないでしょうか。実際、企業によって業務範囲の定義が異なることもあり、求人を見ても区別がつきにくいケースがあります。 本記事では、両者の共通点から8つの観点での違いまで、これからデータ分野でのキャリアを考える方に役立つ情報を体系的に解説します。
データアナリストとは
データアナリストは、統計学を用いてデータの分析や可視化をおこなう職種です。膨大なデータの中から、一見すると関連性がなさそうなものを集め、ビジネスの意思決定をおこなえる形に分析・可視化します。
扱うデータは主に、リレーショナルデータベースに保存できるような構造化データです。たとえば、売上データや顧客情報、Webサイトのアクセスログなど、表形式で整理されたデータが中心となります。このようなデータを統計学を用いて人が理解できる形に分析し、専門家でなくとも理解できるような説明をおこなうのが特徴です。
業務の具体例としては、既存データセットの探索や解析、分析結果をビジネスに活かすためのレポート作成、そしてビジネス戦略の提案などが挙げられます。社内の各部門からの要請に応じて、データ分析の結果をレポートやプレゼンテーションの形で提供する役割を担っています。
データサイエンティストとは
データサイエンティストは、データアナリストよりも高度な分析をおこなう職種です。基本的な統計学を用いるデータアナリストに対して、データサイエンティストは主に機械学習を活用します。
機械学習を用いることで、データから将来を予測したり、音声や画像などの非構造化データを分析したりできます。たとえば、顧客の購買履歴から将来の購入商品を予測するレコメンデーションシステムや、製造ラインでの不良品発生を予測するモデルなどを構築するのが主な仕事です。
業務内容としては、ビッグデータの収集・加工から始まり、予測モデルの作成、機械学習アルゴリズムの開発までを担当します。前処理と呼ばれる、データを機械学習で分析できる形に変換する作業から、機械学習のアルゴリズムの選択やパラメーターのチューニング、結果の分析まで幅広くおこなうのが特徴です。
データアナリストとデータサイエンティストの共通点
両者には異なる点も多いですが、基本的な役割や求められるスキルには共通点があります。
- データ分析を通じたビジネス課題解決
- DX推進における重要な役割
- 必要なスキルの共通部分
データ分析を通じたビジネス課題解決
どちらの職種も、ビッグデータを企業の活動に役立てるという役割は共通しています。データサイエンティストはビジネスの変革を目指し、データアナリストはデータの現状を理解して課題を明確にします。
アプローチは異なりますが、データ分析を通じて新しい知見や洞察を発掘し、企業の意思決定を支援するという点では同じです。そのため、両者ともデータ分析に関するスキルと専門知識が求められます。
DX推進における重要な役割
企業のDX推進において、データサイエンティストとデータアナリストはそれぞれ中心的な役割を果たします。
データサイエンティストは、データ分析や機械学習を用いた予測モデルの構築により有益な知見を引き出し、ビジネス上の課題を明らかにして意思決定をサポートする一方で、データアナリストはデータの収集・分析・可視化という役割を担い、現場のニーズに応える形でデータを活用します。
両者がそれぞれの専門知識を活用することで、企業や組織の競争力向上に大きく貢献しているのです。
必要なスキルの共通部分
両職種に求められるスキルには、多くの共通部分があります。
まず、データベースやSQLの知識は分析業務の基礎となります。データの設計や、SQLによるデータ抽出・集計のスキルは、どちらの職種でも必須です。また、分析用プログラミング言語を扱うスキルや、統計学の基礎知識も共通して求められます。
PythonやRといった言語を使いこなし、基本的な統計手法を理解していることが、両職種のスタートラインとなるでしょう。
データアナリストとデータサイエンティストの違い【8つの観点】
ここからは、両者の違いを8つの観点から詳しく見ていきます。
- ①仕事内容の違い
- ②分析手法の違い
- ③扱うデータの違い
- ④軸足の違い
- ⑤必要なスキルの違い
- ⑥年収の違い
- ⑦求人数・需要の違い
- ⑧タイプ分類の違い
①仕事内容の違い
データアナリストの主な仕事は、既存データセットの探索・解析、分析結果のレポート作成、ビジネス戦略の提案です。具体的な目的や解決すべき課題があり、それに対してデータ分析をおこなうのがデータアナリストの仕事といえます。
対して、データサイエンティストはビッグデータの収集・加工、予測モデルの作成、機械学習アルゴリズムの開発をおこないます。データから新たな価値を創出し、未来予測や最適化などの高度な分析を通じて、ビジネスの成長に貢献するのが特徴です。
②分析手法の違い
データアナリストは基本的な統計学を用いて分析をおこないます。記述統計や推測統計といった手法を使い、データの傾向や特徴を明らかにします。
一方、データサイエンティストは機械学習を主に用います。データクレンジングで不正データや不要データを除去した後、そのデータ分析に適する分析アルゴリズムの選定をおこない、パラメータのチューニングを通じて精度の高いモデルを構築します。
③扱うデータの違い
データアナリストが扱うのは、構造化データが主です。リレーショナルデータベースに保存できる、表形式で整理されたデータを中心に分析をおこないます。
これに対して、データサイエンティストは非構造化データも扱います。音声、画像、動画、テキストといった、定型的な形式をもたないデータも分析対象となるため、より幅広い技術が必要となります。
④軸足の違い
データアナリストはビジネススキル寄りの職種です。ビジネスサイドやクライアントのニーズに寄り添い、データ分析のビジネスへの応用に注力します。
一方で、データサイエンティストは統計スキル寄りの職種となります。統計学や機械学習への深い専門性を背景として、高精度な分析モデルを構築することに軸足が置かれます。
⑤必要なスキルの違い
データアナリストには、SAS、Excel、BIツールなどのソフトウェアの使用スキルが求められます。また、分析結果を分かりやすく資料にまとめ、プレゼンテーションするスキルが必須です。コミュニケーション能力も、ビジネスサイドとのやり取りが多いため、より重要となります。
データサイエンティストには、TensorFlow、Keras、Chainer、PyTorchなどの機械学習フレームワークの使用スキルが必要です。Python、R、SQLといったプログラミング言語に加えて、機械学習・AIに関する深い知識が求められます。
⑥年収の違い
日本国内では、データアナリストの平均年収は約698万円、データサイエンティストの平均年収は約699万円と、ほぼ同水準です。両者にほとんど差はなく、どちらも日本全体の平均年収と比較すると高水準となっています。
ただし、米国では状況が異なります。データアナリストの平均年収が約8万4,000ドルなのに対し、データサイエンティストは約16万2,000ドルと倍近い差がついています。日本はデータサイエンス先進国といわれる米国を追っている最中のため、今後は日本でも両者の年収差が開く可能性があるでしょう。
出典:データサイエンティストの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)|求人ボックス
⑦求人数・需要の違い
求人数を比較すると、データサイエンティストの方がやや需要が多いのが現状です。これは、高度なデータサイエンスを修めた人材の不足が背景にあります。
機械学習やAI技術を活用できる人材は限られており、企業間での獲得競争が過熱しています。そのため、データサイエンティストの方が求人数が多く、市場価値も高い傾向にあるといえます。
⑧タイプ分類の違い
データアナリストは大きく2つのタイプに分かれます。コンサル型は、マーケティング会社やコンサルティングファームなどでクライアントに戦略提案をおこなう分析担当者です。エンジニア型は、データ解析に取り組んで、その結果に基づいて自社の課題解決のためにシステム構築や改善をおこないます。
データサイエンティストも2つのタイプがあります。アルゴリズム実装系は、機械学習アルゴリズムに詳しく、データアナリストが加工・成形したデータをもとに応用的に機械学習を使いアルゴリズムを組み、事業システムに実装します。アドホック分析系は、ビジネス課題の分析に重点を置き、コンサルティング的な役割を担います。
まとめ
データアナリストとデータサイエンティストは、どちらもデータを活用してビジネス課題を解決する専門職です。共通するスキルも多く、どちらもDX推進において重要な役割を担っています。
しかし、データアナリストは統計学を用いた分析と可視化、ビジネス戦略への応用に軸足を置くのに対し、データサイエンティストは機械学習を活用した高度な分析と予測モデルの構築に重点を置きます。扱うデータの種類や分析手法、必要なスキルにも違いがあり、それぞれの強みを活かせる場面が異なる点を理解しておきましょう。
自分の適性や興味に応じて、どちらのキャリアを目指すか検討してみてください。

